経歴

大学で文学部を専攻。当時は現在のような技術系の仕事に就くとは想定していなかった。学生時代に測量のアルバイトを長く続けており、その経験から父の営む会社で働くことを決意。仕事をしながら専門学校へ通い、苦労の末に測量士の資格を取得する。 水戸支店での勤務、東京の一般財団法人公共用地補償機構への出向を経験する。出向先では用地補償に関する調査研究事業、補償の制度や運用についての調査点検、国が定める補償の基準づくりなどに携わる。その後、宇都宮へ戻り平成15年10月に代表取締役社長に就任。現在に至る。

会社の主な業務内容は何ですか?

当社は補償コンサルタント業並びに測量業を営んでおります。あまり世間一般には浸透していない業種かもしれませんのでご説明いたします。 例えば新しい道路を建設する交通安全施設として、新たに歩道を確保したり道路の拡幅が必要になります。用地を取得するためには、そこに既存する建物に移転していただかなくてはなりません。一般住宅や共同住宅、交通施設、商業施設あるいは公共施設の場合もございますが、そういった建物の権利者の方と交渉する役割を担うのが私ども保証コンサルタント業です。 もし移転をお願いする建物が商売をしているお店であれば、営業に支障をきたすケースもございます。その場合、営業報酬はどうするのか。工場であれば従前の機能を回復するにはどのような移転工法を検討する必要があるのか。現地において必要な調査を行い、そのための損失の補償を適正に算出するのが私どもの仕事です。 測量業務を含め、豊富な経験と専門知識を駆使して精度の高い成果品を提供しております。 安心で安全なまちづくりに貢献し、自然災害への対応としての復興支援業務、生活再建の実現に寄与することを目指しています。

経営者、リーダーとして大切にしている価値観は何ですか?

私自身が高い志を持って仕事に臨んでいるか、経営者としての責任を全うしているのかということを常に意識しております。 経営は単に仕事をこなすのではなく「実際の現場で、理想と目的を実現する」と考えています。その理想と目的というのは、当社の掲げる経営理念、そして経営目的です。 主に私が実践していることは「健康経営」です。 従業員が気持ちよく仕事ができる環境を整えることで、会社で働く全員が常に心身ともに健康でいられるよう心がけております。 私にとって従業員一人ひとりが大切な存在であり、戦力です。従業員には、重要な役割を与えることで仕事への意欲を高めてもらっています。もし従業員から意見を求められたり相談されることがあれば、しっかり耳を傾け共感する姿勢を忘れないようにしています。「ありがとう」「よろしくお願いします」といった感謝の気持ちをきちんと伝えることも心がけています。こういった姿勢が、当社の目指す「信頼関係の構築」に繋がると信じております。

東日本大震災のボランティアに参加されたとお聞きしましたが、具体的にどういった活動をされましたか?

測量業界のメンバーと復興支援のためのチームを作り、ボランティア活動をして参りました。宮城県の漁協にお邪魔をしまして、被災にあった漁場に流れてきた廃材の撤去、漁具の修理などを主に行いました。短い時間でしたが、漁港の復興を願ってお手伝いをさせていただきました。

座右の銘や好きな言葉を教えてください。

「現在は過去と未来を繋ぐ鍵である」という言葉です。過去の自分が今の自分を作り上げ、今の自分が未来の自分を作りあげる。そう信じています。 言い換えると「因果の道理」という言葉かもしれません。このことは、私にとっての戒めでもあり、希望の光でもあります。良いことも悪いことも含めて、その結果は紛れもなく自分自身が作り出したものです。自業自得で反省することもありますし、感謝することもあります。私自身の意識や行動を含め、私自身に全ての責任がある。そのことを自覚するように心掛けています。

ご自身の地元で働くことへの思いや、地元の好きなところなどを教えてください。

私は生まれも育ちも宇都宮です。 宇都宮市がいかに良い環境であるかは、ここで育って学業も仕事も経験した自分がよく理解しています。私の子どもは既に成人していて今では孫もいるのですが、私の孫にもぜひここで育っていってほしいという思いが強いですね。 とても住みやすい街で、他の市町村に比べればどんどん開発も進んでいます。安心で安心な街づくりに貢献できたところに住めるということが、私にとっても幸せだなと感じています。

社長になって20年間を振り返っていかがですか?

まず、楽しいという思いはほとんどありませんでした。社長に就任した際は大変厳しい時代にありまして、特に東日本大震災の時は本当にこの仕事をやっていけるのか幹部と相談を重ねました。今後の会社の進むべき道について随分悩みました。 しかし私についてきてくれる従業員ばかりでしたので、逆に私が支えられたような形になりましたね。この従業員達となら何とかやっていけるだろうと安心しました。 私は2代目なので、先代の遺志を継ぐということはそれなりの覚悟が必要でした。無我夢中で20年社長をやってきて苦労も多くありましたが、相談できる仲間がいたことが大変ありがたかったです。私と同じような2代目の方々と相談し合ったり、時には愚痴も言い合ったり…。お互いに知恵を絞って「何とか頑張っていこうよ」と励まし合ってきました。今は下の世代の3代目も成長してきて、会社や業界のためにも彼らを育てるという楽しみがあります。 大変なことももちろん多いのですが、それを乗り越えた時の達成感や嬉しさが社長の醍醐味でもあるのかなと思いますね。

会社の今後のビジョンについてお聞かせください。

当社はおかげさまで50年の歴史を歩んできました。これからも感謝の気持ちを忘れることなく、時代の流れを見据えながら会社のあるべき姿、その方向性を決めていく必要があると思っています。今までの経験にあぐらをかくことのないよう、会社の問題や社内で見過ごしている課題を明確にして、常に危機感を持って課題に向き合う姿勢を崩さないようにしていきます。 今後も、主体性のある組織づくりや環境づくり、人づくりに専念して参ります。

補償コンサルタント業は専攻する学部や専門学校がありませんが、御社ではどういった経歴、学歴の方が多いでしょうか?

測量を学んだ人が入社することが多いですね。それに建物の調査をする上で、建築系の学校出身者は重要な戦力になってくれます。あとは営業の補償を算出する際には会計の知識が、工場の機械工作物などを取り扱う場合には電気工学系の知識が必要になってきます。何を専攻してきたか、どこの学校出身かという点は気になさらなくて問題ないです。 補償コンサルタントには専門学校などがありませんが、当社では教育体制をきちんと整えておりますので、入社後は意欲的に学んでいただきたいです。

この業界を目指す若い方々へのアドバイスをお願いいたします。

「私は何のためにこのことを学んでいるのか」「どういう自分になりたいのか」「自分は何なのか」といった思考力や主体性を大切にしてもらいたいです。

自分と他人との比較ではなく「自分とは何なのか」と自らを軸とした考えを持ち、自分を磨いてください。人を批判するより、人との関係性を構築する力を持ち、その関係性を重んじてほしい。主体性のある人というのは無責任な行動はとりません。一方で客観的な物の見方ばかりする人は、無責任な人間が非常に多いです。何か問題があっても、決して人のせいにはしない。自分が責任を持つ。こういう人が人間的に成長し、信頼できる人だと思います。

 

※こちらのインタビューは 2022年07月28日 に行われました。

株式会社 公共用地補償研究所

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インタビュー動画※別ウィンドウが開きます。